猫屋仲見世通り

幽霊

マンションの隣りに廃屋があったのでした。
その解体がついに始まりました。
周りをぐるりと密閉していたトタン板がはずされると、なんと中には魚屋、肉屋、八百屋、佃煮屋。
地図によれば、そこは「市場」となっているそうな。
昔はさぞかし賑わっていたことでしょう。
2階の住居も壁を剥されて、畳を上げられていました。
人の心の残滓が微かに漂っていて、私はしばし廃屋の前で口を開けていたのでした。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

オルゴールが鳴り出すと、幽霊が現れるのだ。

壊れて傾いた看板の下をくぐって、
割れた硝子を踏んで、
軋む階段の所々抜け落ちた階段には気をつけて。

いつも現れるそれは少女の姿に老婆の瞳。
愛しげに壁をなぜたかと思うと、忌々しげな仕草で畳の床を踏み鳴らす。
忘れ去られたハンガーと電球の傘が、夜風に頼りなげに揺れる。

かつてたくさんの人間が通り過ぎていったこの場所。
少女は懐かしく目を閉じる。
残されていった魂のかけら。
掻き集めて、ライスシャワーのように降らせて遊んでみる。
そのきらきらと儚いこと。

ぽっかりと開いた天井の穴から、月明りが差し込む。
胸に腹に手足に落ちる柔らかな光。

もうすぐこの家とともに消え去るのだ、自分も。

せめてこのかけらたちが昇華されていくのを見届けて。

今はもうない、誰かの心のために。
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# by nyankoya | 2006-03-09 09:36 | 創造の森

残響

三月ですね。桃の花が花屋さんに並ぶようになりました。
店頭で桃の枝を選んでいたら、タイルの床に黄緑のものが散るのです。
なんだろうと思ったら、桃の花の残像でした。
桃色と葉の緑は補色関係なんですね。
この世は色に満ちています。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
視線をずらすと幻の緑が丸く散った。
一瞬前まで見つめていた真紅の花。

冬の名残を霧のようにまき散らしながら、風にさらわれてゆく。

全く正反対の
相反する
きつく惹かれ合う
必ず思い出す
苛烈な残響

紅に緑
紫に黄
青にアイボリ
黒に白

鏡合わせの世界でいつも見つめ合っている。
天使のような悪魔か
悪魔のような天使か

混ぜれば灰色、重なれば白。
どちらを選ぶかはお好みで。
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# by nyankoya | 2006-03-06 09:32 | 日々の類似品

words

今帰りです。
つつつ疲れた。
長時間ディスプレイを見ていると、色の感覚がおかしくなります。
文字に色が付いて見えたり、画像がやけにくすんで見えたり。
帰る直前に、30分前に打ったメールを読み返したら、
「お願いします」が「尾根が死にます」になっていました…。

明日の朝一番に度肝を抜かれる人がいます。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

帰り道に何やら光るものが見えた。

前方の道路の隅。
近寄って拾いあげたら、「追って連絡します」であった。
薄く堅い金属でできた、茶色の。

ふと辺りを見回すと、そこここに様々な言葉が落ちている。

真っ赤で熱を持った「痛い」
小さいくせにずっしりと重い「もう疲れた」
ピンクでふわふわの羽根が生えた「大好き」
流麗な形でつるつると滑る「ご機嫌うるわしゅう」
透き通った碧い「ごめんなさい」

灰色にもつれあった誰かの言い訳の糸玉に足を取られて、転びそうになる。
おいしい匂いのする湯気が「お帰りなさい」の形に立ち上ぼる。
子供たちの後ろを、「ただいま」がゴム毬のように弾みながらついていく。

真っ直ぐ伸びる遊歩道は、「家路」の形にくねくね。

「睡魔」の長い影を引きずって、
ふかふかの「おやすみ」に、きゅうと沈んだ。

今日も一日お疲れ様。
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# by nyankoya | 2006-02-23 00:39 | 日々の類似品

春近く。

日本語って面白いですね。
特に擬音語とか擬態語。
一見意味不明な言葉の羅列なのに、びっくりするくらい鮮やかに状態を表してしまう。

なんでこんなことを突然言い出したかというと、擬音語・擬態語の辞書を買ったのです。
とても画期的でかわいらしい本。
今の私のお気に入りです。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

下草をさくさくと踏んで歩く。
太陽がさんさん。
小川がちょろちょろ。
鳥はぴーひょろ。

するすると空を滑る飛行機雲を眺めて、
さらさらと風になびく髪。
ほとほと歩く三毛猫とすれ違う。
塀の上では黒猫がうらうら。
思わずにっこり。

パン屋さんの紙袋がかさこそ。
一等見晴らしのいい丘の木陰に腰を下ろして、いただきます。
メロンパンをぱくり。
ふわりと横切る綿毛に春の気配。

今日もほっこりしあわせ。
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# by nyankoya | 2006-02-14 09:32 | 日々の類似品

しりとり

ご無沙汰でした。
何をさぼっていたかというと、風邪をひいたり、スーパー残業続きだったり、結婚したりしてました。

とかく人の世はせわしないものです。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

林檎→午前中→潤す→好きなものは最後に食べる質→近道→千鳥格子→縞猫→この世界の果ての話→潮騒→稲荷寿司→死活問題→生きるのは下手な方→嘘つきだけど優しい→祈る指先→吉と出るか凶と出るか?→カナリア→あざとくしぶとく→薬指→微量の幸せ、微笑の美しさ→さて、また人生の続きを。
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# by nyankoya | 2006-02-08 09:23 | 近況

Open

週末の雪には参りました。
今日も今日とて路面はつるっつるです。はー怖い。

雪をかぶっても東京拘置所は堂々たるものです。
ついにホリエモンが来ましたね。なかなか悪いことって出来ないものです。

春はまだかな。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

雪の溶ける音がする。
六花がつるりと溶け合って滑り落ちる音が。
ほどける息吹と光を帯び始める風。
雪の女王のまどろみ。
ひび割れた卵から零れる金色。

深くソファに腰掛けて、読みかけの革表紙を開く。
挟んだきり忘れていた押し花の青。

ふいに足音を聞いて振り返ってしまう。
透明な下草を踏む、幻の。

すぐそこまで来ている。でもまだ少し早い。
まだ冬の長い裾の端を掴んで、遠くを見ている。
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# by nyankoya | 2006-01-24 09:28 | 日々の類似品

パンドラ

mac復活しました。
なにやらCPUがパニクったらしいです。
そんなに難しい芸を要求した覚えはないのですが…。

通勤電車から東京拘置所が見えます。
まだ建設中ですが。
妙に近代的で気になる建物です。
これに限らず、多数の人間が寄り集まる建物は、少し怖くて興味をそそられます。特に夜の姿に。
きっとたくさんのひとのこころのを吸っているだろうと思うからです。
パンドラの箱ってこんな感じだったんじゃないでしょうか。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

ひんやりとした壁に耳をぴたりとつけて、目を閉じる。
聞こえるのは完璧な静寂。
密閉された巨大な箱の中には、
とろりと煮詰められた多くの感情。
ひと冬ごとに重さを増して、すんとそびえ建つ。
この中にあるのは私の心。

壁に耳をぴたりとつけて、静寂の奥の、かすかに揺れるさざ波を聴く。

この中にあるのは煮詰められた生命のスープ。

怒り、悲しみ、幸福、憎しみ、高慢、偏見、怠惰と恋心。

陽の光を浴びると消えてしまう闇。
喧騒にたやすくかき消されてしまう水音。

私は夜毎、壁に耳をつける。

それは秘密の音色。
ひとのこころの、蜜にも似た眠り。
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# by nyankoya | 2006-01-18 09:27 | 心の裏側

自転車とプラネタリウム

ちょっとご無沙汰でした。

連休は、髪を切りに行ったり友達と会ったり。映画を観たり。
原宿の貴和製作所でパーツを買い込んで、アクセサリ作りに没頭したりしました。

自転車で散歩したりもしましたよ。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

冷たい冬の風が頬にあたる。
日曜の午後、自転車に乗って、いつもより5cm高い目線で、町を駆ける。
雑踏を抜けて、
放置自転車の迷路をくぐって、
おばあちゃんの後ろはそうっとゆっくり。

上空を渡るパラグライダ。
誰かのへたくそなピアノ。
公園のサックス吹きはプロ並。
鳩とおいかけっこして、
枯れ葉舞う路地を抜けて、
ギアを入れてもっと速く!

太陽がてっぺんに届く頃には、水際でお弁当を食べましょう。
温かいお茶を買って、
水鳥にお裾分けしながら、
デザートは甘い蜜柑。
空に流れる時間と水に流れる時間が微妙に違うような気がするのはどうしてだろう。

帰り道が少し遠くてほわほわ光るのはどうしてだろう。

大切なものはみんなあの家に置いて来たから、
プラネタリウムに寄ったら、ゆっくり帰りましょう。

きっとちゃんと帰りましょう。
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# by nyankoya | 2006-01-11 09:29 | 日々の類似品

深海魚

ふいに耳元で、ちゃぷんと水の揺れる音がした。

帰宅ラッシュの電車の、固い椅子に腰掛けて、私はうっとりとその音に耳を傾ける。

ちゃぷん
ちゃぷん
たぷん

水音を聴いていると、眠たくなるのはなぜだろう。

人の体は70%が水でできているという。
月の引力に合わせて繰り返される潮の満ち引き。
呼応して狂わされる人々。

コップ一杯の透明な水をごくごくと飲み干す時の、あの満たされた気持ち。
その水の甘さ。
70%の絶対条件。

100%満たされたら死んでしまうと知っていても、時折無性に恋しい。
この体すべてを水中に投げ打ってしまいたい。
喉の奥まで満たされてしまいたい。

きっとこれは、繰り返す生命に刻まれた、果てない前世の記憶。
もう還ることのできない水への、永遠の郷愁。

いつか百万回転生を繰り返したら、きっとちいさな深海魚になって、海の底をたゆたいたい。

それまでは今しばらくこの土の上で。

いつか水に呼ばれる日まで。
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# by nyankoya | 2006-01-05 20:27 | 心の裏側

1月4日

macが死んでしまいました。
なんか突然「ぶっ」とかいってダウンして、それきりうんでもすんでもないんです。
なぜだ…。

あらゆる手をつくしましたが、工場送りになりました。
仕方がないので不在の相方のwinを借りてこそこそ更新です。

うう…。悲しい…。
早く戻ってきてくれ…。

さて、新しい年皆さんはいかがですか?
私は…今年はもうちょっと大きな目標を達成してみたいなあと。
そ、そのためにはあのmacの中にあったデータが必要なんです…。
ぐすん。
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# by nyankoya | 2006-01-04 22:30 | 近況


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