猫屋仲見世通り

千年王国

暑いです。
にゃんこやは暑さに弱い生き物なので、これからが大変。
今年の夏はどれくらい暑くなるのかな。

今年の夏は観葉植物をいっぱい買って、屋内ジャングルを作りたいと密かにたくらんでいます。

季節の移り変わりを感じる時、私の周りにいる人達の優しさを知った時、世界がゆっくりと確実に回っていることを思い出します。
「千年王国」ってきっとあるんじゃないかと思えます。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

風に色が付いているのを確かに見た。
昼下がりの雨上がり。
空より青くて水より淡く。
目の端を横切って螺旋形に散った。

野良猫の生命の音を聞いた。
心臓のたてる温かな響きと血の巡る緩やかな音。
てのひらを差し出すと、にゃあああご、と鳴いて額をすりつけた。
髭の先のそよぐ。

道行く人の胸に明かりが燈っているのを見た。
夜道をほのかに照らす、白熱灯に似た揺るぎなさ。
調子っぱずれの鼻歌。
ここがどこなのかどうでもいいことさ、と。

夜空に星の見えない都会の真ん中で、足元に星を見た。
無数に撒かれて天の川を作る。
もう準備は出来ているのだ。
人は皆、行くべき場所を知っている。

ここをたどれば、きっと千年の王国へ行ける。
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# by nyankoya | 2006-05-22 09:29 | 心の裏側

慈雨

東京はもはや梅雨に入ろうかというくらい雨、雨、雨。
気圧の変化に弱い私は、緩い頭痛を抱えつつ、今日も青空柄の傘で出勤です。

洗濯はお預けだけど、頭もどんより痛いけど、雨降りは好きなのです。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

雨の日にビー玉を拾った。
青くて中に虹が閉じ込められた小さなガラス。
かわいかったので持って帰って、小物入れに鍵と一緒に入れておいたら、朝には女の子になっていた。

おかっぱ頭にブルーのワンピースを着て、きょとんと床に座っている。
ちょっとびっくりしたが、時間もないので、朝ご飯を一緒に食べて、鍵を預けて会社に行った。

雨がずっと降り止まない。

帰ると台所が目茶苦茶になっていて、隅でしくしくと泣いている。雨粒みたいな涙。

「ごはんを作って待っていようと思ったの」
うん
「でもシンクが高くて」
うん
「お鍋が重くて」
うん
「お味噌汁ひっくり返した」
うん、いいのよ。ありがとう。でもね、お味噌汁にツナ缶を入れるのはどうかと思うの。
味噌汁とともに散ったツナの残骸を見て、失敗してくれて良かった、とこっそり胸を撫で下ろした。

彼女は気を取り直したようにすっくと立ち上がると、ダイニングテーブルに向かってぽんと手を叩く。
瞬く間に豪華な食事が現れた。
ハンバーグコロッケパスタ刺身寿司七面鳥などなどずらりと並ぶ。
最初からこうすれば良かったのに、と言うと、
「心の問題だもん」
と憤慨する。大きすぎる私のエプロンの肩がずるりと落ちた。

冷めないうちにということで、片付けは後回しにして食事。
彼女は小さい体にどんどん食べ物を詰め込んでいく。
私も負けじと箸を動かす。
おいしいおいしいと言い合って、大きなパンをわけ合って、蟹の殻を剥いてやりながら、食べた。

一通り平らげて、台所の掃除をして、最後にふたりでお茶を飲んだ。

彼女はくいっと湯飲みを傾けて、ぷはぁっと溜め息をつくと、テーブルにちょこんと両手をついて頭を下げた。
「一宿一飯の恩義でございました」
そう言って、エプロンを丁寧に畳んで、玄関から出ていった。

もっといればいいのに。
ずっといればよかったのに。
誰かと食べるご飯はおいしかったのに。

切ない気持ちで玄関を開けると、雨が止んでいた。

またいつか、あのビー玉を拾ったら、今度は一緒に味噌汁を作ろうと思う。
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# by nyankoya | 2006-05-18 09:45 | 創造の森

家守

連休が終わってしまいました。
会社へ行く途中で本気で迷子になってしまい、涙目で街を彷徨いました。
精神科へ行った方がいいのだろうか…。

連休中に実家が引っ越しをしました。
若干観光地で、静かな良い町です。
新しい家に大きな蜘蛛が住んでいました。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


蜘蛛の糸が指に絡んだ。

台所の端に、8本の長い足。
恐ろしくて近寄れない。
光る細い糸を吐き出して、するすると降りて来る。
その銀色にも見える丸い背。

「夜の蜘蛛を殺しちゃいけないのよ」
母が言う。

蜘蛛はものも言わずゆっくりと歩く。
換気扇の中へと消えていった。

おかしな夢を見て夜中に目が覚める。
延々と糸を紡ぐ夢。
紡いでも紡いでも、紡ぐべき糸が銀色の山となって、私をせかす。
そのうち糸巻きが足りなくなって、あふれる銀にいつしか私は溺れてしまうのだ。

布団から抜け出して、水を飲みに台所へ行くと、またあの大きな蜘蛛が壁に張り付いていた。
月明りが真っ暗な台所を照らす。
しばらく睨み合って、ふいに蜘蛛が動いた。
壁を這って、出窓の細く開いた隙間から、まるで月明りに誘われるように、するりと出て行く。
私が慌てて出窓に駆け寄った時には、もうその銀の背中は跡形もなく消えていた。

翌朝母はぽつりと言った。
「家を空け渡してくれたのね」

でも今でも時折、その柔らかくか細い糸が、指に絡む気がするのだ。
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# by nyankoya | 2006-05-09 19:46 | 日々の類似品

狐の嫁入り

やっとやっと帰りです。
うちの会社は母体がメーカーなので、休みが多いのです。
GWも今週金曜日から10連休。
しかし、休むということは、その前に2倍働くと言うことなのですね。
なんてことだ。巧妙なトリックだわ!

今日はずっと作業してたデータがすっとんでしまい、職場で三途の川の渡し賃を数えてしまったにゃんこやなのでした。

一昨日の東京は、いきなり雷雨のち若干お天気雨でした。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

じいさんと手をつないで歩いていたのだった。
畑道をさくさくと踏む。
じいさんの鼠色のシャツの背中と、私のピンクのズックと。
春の日差しと畑の青と。

風が樹々の香りを乗せて渡って行く。
しわしわでごつごつの優しいてのひら。
見上げた笑顔の、穏やかな皺。

さくりさくり。
春の土の、甘い感触。

ふとじいさんが空を見上げて立ち止まる。
どうしたの、と問う前に、額にぽつりと滴。
鼠色のシャツにも点々と染み。
真っ青に晴れ渡った空から、きらきらと雨が散っていた。

じいさんが私の手をぎゅっと握った。
俺がいいと言うまで声をだすんじゃないよ。
人差し指を唇に当てて、うなずく。

気付けば畑道の両脇に無数の提灯が燈っているのだ。
あっと声をあげそうになって、慌てて空いた手で口を押さえた。
見れば、提灯を持っているのは皆狐で、しっぽを揺らしながら、整然と何かを待っている。

じいさんは不思議に透明な目で私を見下ろすと、おもむろに道の先を指差した。

ちりん。
ちりん。
ちりん。

か細い鈴の音。
そして、しゃん、と凛々しくひとつ鳴ると、花嫁行列が現れた。

すました狐が手綱をひくのは、まばゆいほどの白馬。
背中には角隠しの雌狐。
天からの滴を浴びて、まるで孔雀のように艶やかで、小鳥のようにはかなげな花嫁姿に、私は息を飲んだ。

狐たちは恭しく頭を垂れて、雨に濡れながら、花嫁を送る。

彼らに習ってかくりと首を折った私の前を横切る瞬間、その瞳の、ツルバミのように憂いのある黒を盗み見た。

あれほどにうつくしいものを。

私は。

ただの一度も見たことはなかった。


じいさんにそっと髪をなでられる頃には、もうすっかり雨はあがっていた。

私が狐の嫁入りを見たのは、それが最初で最後だ。
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# by nyankoya | 2006-04-27 00:00 | 創造の森

巷に雨の降るごとく

ひさびさに美容院へ。
いつも担当してもらっている美容師さんが、今度姉妹店の店長になるそうな。
もうすでに7年のお付き合い。もちろん私もそちらのお店に移動です(笑)
栄転に拍手喝采を贈ったのですが、無類の旅好きな当の本人は「世界遺産巡りができなくなる」と嘆いておりました。

伸びきったパーマをくるっくるにしてもらいました。
でも帰りは雨降りでしょんぼり。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

ひたひたと雨が降る。
肩に髪に。
腕に足に。

しっとりと塗り込められた喧騒が耳に遠く。
裸足の土踏まずから生まれるリズム。
大樹のように全身で水を受け止めて。

ターン。

ステップ。

閉じ込められた観葉植物になりきって、雨上がりの虹を待とう。

雲間から光が差し込んで来たら、傘を持ってあなたを迎えに行きます。

もしもまだ雨が降っていたら、この傘はささずに帰りましょう。

もしも晴れていたなら、青空柄の傘をさして、手をつないで、コロッケを頬張りながら帰りましょうね。
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# by nyankoya | 2006-04-23 19:34 | 日々の類似品

箱に猫

予想外のことが起きたり、予想したことが起きなかったり、人生とはなかなかドラマチックなものです。
だからこそ楽しいのだ、と開き直れる度胸と根性が必要ですね。
特に何があったというわけではないのですが、なんとなく。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

シルクハットの神様が出て来て言った。
「この箱の中の猫は生きているか死んでいるか?」

しばらく考えて、「生きている」に決める。
根拠は、ない。

神様はにっこり笑ってふたを開けた。
中の猫は死んでいた。

今度はジーンズをはいた天使が出て来て言った。
「この箱の中の猫は生きているか死んでいるか?」

わからないのでカンで「死んでいる」

天使が無表情に箱を開けると、三毛猫が飛び出した。
抱き留めて喉をくすぐってやると、ごろごろ。

次に出て来たのはトレンチコートの悪魔。

「この箱の中の猫は生きているか死んでいるか?」

私が答える前に、悪魔はにやりと笑って箱を開ける。
中身はからっぽ。

最後はハーフパンツをはいたピエロ。

「この箱の中の猫は生きているか死んでいるか?」

質問が終わるや否や、無数の鳩が破裂するように飛び出した。

紙の残骸と化した箱をぶらさげて、ピエロは彼方へ飛んで行く鳩たちを見送る。
やおら私を振り替えると、左半分笑って、右半分泣いた顔で言った。

つまりふたを開けなきゃ何も分からないってことさ。
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# by nyankoya | 2006-04-18 09:38 | 日々の類似品

女に向かない職業

子供の頃、ますむらひろしの「あたごおる物語」や、猫十字社の「小さなお茶会」なんかが好きでした。
大人になってからは、稲垣足穂や川上弘美、梨木香歩、村上春樹などなど。
美しくて不思議で実は怖いものが潜んでいる世界が好きなんでしょう。
綺麗事では済まないこの世を淡々と描き出す話が好きなんでしょう。

さて、そんなこととは全く関係なく、
今日は少し創作。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

黒いコートに黒い革靴。
いかにもな格好で彼は公園のベンチに座っていた。
手にはマックシェイクというアンバランス。

彼は私の姿を認めると、シェイクのカップを無言で差し出した。
私が首を振ると、緩慢な動きでカップをひっこめる。
「飲まないの?」
尋ねた。
「…甘くて不味い」
「なら買わなきゃいいのに」
少し考えるようにしてから彼は答えた。「興味本位」

彼はカップの蓋をはずすと、中身を地面に少したらした。どこからともなく集まってきた蟻が、集団でそれに群がる様を穴の開いたような目で見つめている。

「仕事楽しい?」
「別に」
「じゃあ辛い?」
「特に」
「どうして今の仕事を?」
「さあ」
「世襲制とか?」
「違う…けど、少しそう」

少しそう。
私は首をかしげた。
「ある日気がついたら、そうなってる。みんなそうだ。望んだわけでも望まれたわけでもない。ただ、そうなんだ」
蟻が溶け出したシェイクの海で溺れている。
「…それは嫌だねぇ」私も彼と一緒に視線を落とした。
「別に」
彼はカップの中身を全部地面にまいて、ゴミ箱へ投げ入れた。
かつんとふちに当たって、綺麗に中へ落ちる。

「…知ってる人の命をとったことがある?」また尋ねる。
彼はこくりとうなずいた。
「公園でぼんやりしていたら、話しかけて来た奴がいた。しばらく話していたら、携帯が鳴った。いつも仕事はメールでくるんだ。あの世も進歩したもんだ。次の死亡者の名前と死因だけの事務的なもんだけどな。ちょっと前まではポケベルで、その前は鳩だった」
「鳩?」
「うん。伝書鳩。足の筒に死人の情報が入ってる」
「ほんとに?」私は笑った。
「そう。鳩はどこでも自由に飛んでいけるからな。黒電話よりよっぽど融通がきく
まあとにかくそのメールに載ってたのが、たまたま話してた奴だったんだよ」
そうか、と私はつぶやいた。悲しかったね、とも言った。
彼はコートの内ポケットから煙草を出した。とんと箱を振って、飛び出した一本を加える。
「別に悲しかねぇよ。人はみんな死ぬんだ。多少のタイムラグがあるだけさ…こういうのは、女にゃ向かねえ仕事かもな」
それだけ言うと、彼は煙草に火を点けた。うまそうにゆっくりと吸い込む。

人はみんな死ぬんだ。

ぴりりと電子音が鳴った。彼は今度はコートの右ポケットから携帯を出す。最新機種なことにまた笑えた。
開いたフリップを無言で見つめる彼に、また質問を投げ掛けてみた。
「ところで死因って必要なの?」
んぁ、と間の抜けた返事をして、彼は顔を上げた。初めて見るその瞳は、漆黒の闇をともしていた。
彼は質問には答えずに、携帯の画面を私に見せる。

「…どうして?」
載っているのは、私の名前だった。冷たいゴシック体で、他人の名前のような顔をして。
「そうやって訊く奴がいるから必要なんだよ」
親指で画面をスクロールさせる。

―死因、心臓麻痺

ぱちんと音をたててフリップを閉じると、彼は私の手を取った。
「行くぞ。心配すんな、あの世はいいとこだ。税金ないしな。まずは就職面接から。次は公団の抽選。忙しいぞ」
私はまた笑って、足元の自分の体をまたいで、手をひかれるまま歩き出した。
大きくて、乾いていて、暖かいてのひら。
まるで愛のように優しくて、恋のようによそよそしい。

「…ねぇ、税金ないけど就職面接ってことは、所得税は払わなくていいってこと?」
「…お前は質問ばかりだな」

溜め息と苦笑混じりで。
空へ続く階段を登って。
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# by nyankoya | 2006-04-11 21:08 | 創造の森

川の流れに

金曜日は仕事をさぼって映画を観に出かけました。
「かもめ食堂」です。好きな女優さんばかり出ているので行ったのですが、すごーくすごーくよかった。
フィンランドに行きたくなりました。

ゆるやかに美しいけれど、決して時間の流れを止めることはできないのです。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

電車の座席に腰掛けると、向かいの窓硝子に時間が映って見えた。
矢印の形をして、すごいスピードで後ろへ後ろへ。

手を伸ばしてみると、指先からあっさりと硝子の中へずぶりと沈む。
矢印のしっぽをひとつつかむ。
つるつると滑るそれを五本の指でなんとか絡め取って、両手でがっちりつかんでやる。
矢印はいやいやをするように、ぴちぴちともがく。
私は矢印の先に唇をよせて囁いた。

もう少しだけここにいよう。
どうして急ぐ必要があるの。
どうしてここで止まってちゃいけないの。
行く先に何があると言うの。

ばちんと矢印がはねた。
私は打たれた手の甲がうっすらと赤く腫れるのを感じながら、飛び上がったそれを見つめた。

「留ることはできない。生きていたいと思う限りは」

どこにあるかわからない口から。神のような声で。

そしてまた窓硝子の海に飛び込み、どれがどれやらわからなくなって流れていく。

打たれた跡が矢印の形に腫れていた。
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# by nyankoya | 2006-04-03 09:25 | 日々の類似品

右手左手

例にもれずFF12生活です。
しかしファミコン(言葉に年輪が!)がへたなのでなかなか進まず…。

右手と左手それぞれたくさんボタンを使い分けなければならないのですが、それがなかなかに大変なのです。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

右手で食べる
右手で書く
右手で持つ
右手で切る
左手でなでる
右手で叩く
右手でひっかく
右手で選ぶ
左手で支える
左手でさよならと手を振る
右手でひっぱたく
右手でメロディーを弾く
左手で伴奏
右手で涙をぬぐって
左手でスカートの布地を握り締める

右手で憎む
左手で慈しむ

右手には汚れ仕事を?
左手では綺麗事を?

いいえ、本当の本当に業が深いのは、利き手の反対側。
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# by nyankoya | 2006-03-24 09:27 | 心の裏側

文字化け書店

はい月曜日です。いやですね、週始めは。

ひさびさに夢の話です。
久しぶりだけあってとびきりおかしな夢でした。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

いつもの本屋へ行く。
いつもと同じ書棚にいつもと同じ店員のエプロン。
てけてけと文庫本のコーナーまで歩いて、一冊を書棚から抜き出す。
中身が文字化けしていて読めない。
新潮も文春も角川もだめだった。
新書も実用書もコミックも全部。

他の人はみんな平然と立ち読みしているのに、私だけ、文字化け。

途方に暮れて洋書のコーナーまでよれよれと歩いて行くと、洋書があるべき場所に、見慣れないカウンターができている。

「テキストエンコーディング」のささやかな看板。
係員はベストに眼鏡の黒兎。

「あのぅ」
おそるおそる声をかけると、黒兎は顔をあげた。長い耳と鼻をひくりと動かす。
「文字化けしてるんですけど…」
黒兎は眼鏡をふさふさの手で押し上げた。
「あんたmacやろ」
なぜか関西弁。
「は?」
「ここは基本winやからな。SHIFT-JISが多いんや。デフォルトだとようけ読めへんで。設定変えたるさかいに」
そう言って、PCの画面を見ながら私の人差し指をぽんぽんと叩く。
「ほれ、読んでみ」
絵本を渡される。『ぺんきや』。
中身も今度はすんなりと読めた。
私は安心して、絵本を黒兎に返した。
「ありがとうございます。助かりました」
黒兎は絵本を受け取ると、眼鏡を押し上げながら、私の目を見つめた。
猜疑心の強い老人のような目だった。

「…あんたなぁ、なんやうまくいかんこととか、嫌なことがあってもな、すぐにうろたえたらあかんで。落ち着いてしっかり自分と周りを見んといかんよ。案外大したことなかったりすんもんなんやから。
自分には神さんがついとるーくらいに思っとき。ええな?」
なぜ兎に説教を…と思ったが、あまりにも真摯な物言いに、思わずがくがくとうなずいてしまった。
黒兎は鼻をひくりと動かすと、それきり口を噤んで視線をまた手元に落としてしまったので、私もその場を離れた。

全部読めるようになった文芸書の棚から、穂村弘の『世界音痴』を買った。

そして、音痴は私だよな、と思いながら、ゆらゆらとエスカレータをのぼる。
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# by nyankoya | 2006-03-13 09:49 |


日々目に映るものを、愛でてみたり憎んでみたり。コメント・TB・リンクなど頂くと、ちょっとどうかと思うくらい喜びます。
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