猫屋仲見世通り

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雨の日に

雨が止みませんね。
このまま夏が戻らずに、ずうっと雨に閉ざされてしまうのでは、と心配になります。
風の谷みたいに。

降っても晴れても、日々の営みを絶やすことは出来ません。
それは天気も心も一緒ですね。

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雨の日はなくしたものばかりを思い出す。

お気に入りだった猫の傘。
いるかのキーホルダー。
割ってしまった鉢植え。
霧雨を背に「ごめん」とつぶやいたあなた。

外は雨。
ひたひたと降りしきる。

季節はずれのホットコーヒーに、ビスケット。
薄い文庫本に、アイリッシュハープとギターのデュオ。

茶色い栞ひもを指でなぞりながら、また、なくしたものに思いを馳せる。

水玉のハンカチ。
透かし編みのカーディガン。
緑のキャスケット。
「誰かの子」であるということ。
庇護という名の鳥籠。

窓の外を、白いセダンが横切った。
他人ばかりの喧騒。
知らない人々。

これくらいがいい。
少し寂しいくらいがちょうどいい。

最後のひとくちを飲み干して、席を立つ。
帰り道には、花屋に寄って、緑のはっぱの苗を買おう。
雨が降る度に育つもの。

雨の日に手に入れたもの。
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by nyankoya | 2006-07-25 09:13 | 日々の類似品

猫と好奇心

子供の頃、自分がこの世にいるのが不思議でなりませんでした。

どうして生まれて来たのか、ということではなくて、この世界そのものが。
「私」に意識を集中させると、手に触れているもの、目に見えているもの、耳に聞こえているものすべてが、急に妙に思えて来るのです。
「私」ってなんだろ。
「ここ」はどこだろ。
「明日」って?
「昨日」って?
「今」って?

そう考えると急に世界が見知らぬものに思えて、とても怖くなってどきどきする。
足元が脆くなった気がするのです。

目の前を通り過ぎる、私でない人々が、みんな自分を「自分」と認識していて、世界に存在している。
「私」が私だけではないということ。
私が知らない世界が無数に存在しているということ。
大きな海に身一つで放り込まれたような心細さ。

それでも、一人でいる時たまに、わざと意識を「私」に集中させて、世界と足元のゆらぎを感じて、そのスリルを楽しんでいました。
暗い子だったのです…。

でもそれが、誰にも内緒の、私一流の一人遊びでした。

それをやった後は、決まって怖くなって、母にまとわりついていたのに。

今でも時々やってみます。
ちゃんとできる。
でもあの頃のような恐怖もスリルも、もうそれほど感じない。
世界が、思っていたほど広くて美しいものではないと、知ってしまったからでしょうか。
それとも、世界の何かを、大人になることで、諦めて完結させてしまったからでしょうか。
それとも、少しは足元に自信ができたからでしょうか。


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目を閉じて、闇にくるまる。
じんわりと暖かく、でも目の奥だけがひんやりとする。
奇妙な感覚。
するすると落ちて行く。
滑らかで生温い闇の底で、真理に出会う。

「世界のすべてを教えてあげようか」
真理が言う。
しゃがれてて、変に甘くて、誘うような声色。
私は起き上がって、真理の顔を凝視した。
よく見えない。
黒いマントを着て、ぼんやりと光っている。
「これならわかりやすいだろう?」
言って、私に顔を近付ける。
真理の顔がチェシャ猫になった。

「この世のすべてが見たくない?」
シャンソンのように甘く、憂いを含んで。

私は答えない。答えられない。
好奇と恐れがシーソーゲームをする。

「…悲しみ、喜び、妬み、嫉み、愛情、恋情、幸福と不幸。お前の中のすべてを、あの子の中のすべてを、知りたいとは思わない?」
闇にも白い手を差し出した。
この手を取ってしまっては、知ってしまっては、きっと二度と戻れない。

「本当の本当を知るのと、お前がお前のゆがんだ世界を、大人になっても決められずに彷徨うのとどっちがいい?」

シーソーが、好奇心の方へ、かたりと乾いた音を立てて傾いた。

「私は」
かすれた声で答えた瞬間、がらりと背後でふすまが開いた。
肩をつかまれて力一杯後ろに引き戻された気がした。

「ご飯よ」
母の声。
私は冷や汗をかいて、自室の畳に座っていた。
母は、またぼーっとしちゃって、と呆れた声を出した。
その顔を見て、思わず安堵する。

あの手を取らなくてよかった。
だって好奇心は猫を殺すのだから。
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by nyankoya | 2006-07-11 09:24 | 心の裏側

遠雷

夏ですね。
容赦なく夏です。
水分が足りずにぜいぜい言いながらの出勤です。

さて、夏と言えば雷なのですが、私は昔から雷は怖くないのです。(地震はだめなのですが。)
空が光るというファンタジーに、いつもぞくぞくとしながら窓にかじりついている子供でした。

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ひどく不愉快な夢を見たのに、内容を忘れてしまった午後。
神の銅鑼が空いっぱいに鳴り響く。

雲間からもれる、フラッシュライト。
小さな龍が泳いでいくように、光が散る。

屋根裏から梯子をかけて、天窓を開けて屋根を登る。
雨が嫌いなはずの君も、なぜか一緒にやって来た。
その涼しい鈴の音とともに。

避雷針にそっと寄り掛かって空を仰ぐ。
蜘蛛の糸のように柔らかな霧雨が、私たちを抱き締めるように閉じ込める。
猫が喉を鳴らすように遠く響くその音を聴きながら、私はうっとりと目を閉じる。

あの青白い光の帯にくるまったら、どんな気分がするだろう。

でも私は決して避雷針(安全圏)を離れない。
約束されたスリルをお手玉にするのはずるい?

だって避雷針(安全圏)に寄り掛かって眺める雷(危険)の魅力は格別。
知恵の実を食べたなら、知っているでしょう?

それでも時折、あの光り放つ雲の海にダイブしたい衝動に駆られてしまう。
そんなささやかな自虐をそっと抱えているくせに。

ずるいね。
やっぱり君の濡れた毛並みや、滴をたたえる髭や、ゆらゆら揺れる尻尾を眺めて安心したりしているんだ。
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by nyankoya | 2006-07-04 09:44 | 創造の森


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