猫屋仲見世通り

カテゴリ:日々の類似品( 28 )

雨の日に

雨が止みませんね。
このまま夏が戻らずに、ずうっと雨に閉ざされてしまうのでは、と心配になります。
風の谷みたいに。

降っても晴れても、日々の営みを絶やすことは出来ません。
それは天気も心も一緒ですね。

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雨の日はなくしたものばかりを思い出す。

お気に入りだった猫の傘。
いるかのキーホルダー。
割ってしまった鉢植え。
霧雨を背に「ごめん」とつぶやいたあなた。

外は雨。
ひたひたと降りしきる。

季節はずれのホットコーヒーに、ビスケット。
薄い文庫本に、アイリッシュハープとギターのデュオ。

茶色い栞ひもを指でなぞりながら、また、なくしたものに思いを馳せる。

水玉のハンカチ。
透かし編みのカーディガン。
緑のキャスケット。
「誰かの子」であるということ。
庇護という名の鳥籠。

窓の外を、白いセダンが横切った。
他人ばかりの喧騒。
知らない人々。

これくらいがいい。
少し寂しいくらいがちょうどいい。

最後のひとくちを飲み干して、席を立つ。
帰り道には、花屋に寄って、緑のはっぱの苗を買おう。
雨が降る度に育つもの。

雨の日に手に入れたもの。
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by nyankoya | 2006-07-25 09:13 | 日々の類似品

家守

連休が終わってしまいました。
会社へ行く途中で本気で迷子になってしまい、涙目で街を彷徨いました。
精神科へ行った方がいいのだろうか…。

連休中に実家が引っ越しをしました。
若干観光地で、静かな良い町です。
新しい家に大きな蜘蛛が住んでいました。


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蜘蛛の糸が指に絡んだ。

台所の端に、8本の長い足。
恐ろしくて近寄れない。
光る細い糸を吐き出して、するすると降りて来る。
その銀色にも見える丸い背。

「夜の蜘蛛を殺しちゃいけないのよ」
母が言う。

蜘蛛はものも言わずゆっくりと歩く。
換気扇の中へと消えていった。

おかしな夢を見て夜中に目が覚める。
延々と糸を紡ぐ夢。
紡いでも紡いでも、紡ぐべき糸が銀色の山となって、私をせかす。
そのうち糸巻きが足りなくなって、あふれる銀にいつしか私は溺れてしまうのだ。

布団から抜け出して、水を飲みに台所へ行くと、またあの大きな蜘蛛が壁に張り付いていた。
月明りが真っ暗な台所を照らす。
しばらく睨み合って、ふいに蜘蛛が動いた。
壁を這って、出窓の細く開いた隙間から、まるで月明りに誘われるように、するりと出て行く。
私が慌てて出窓に駆け寄った時には、もうその銀の背中は跡形もなく消えていた。

翌朝母はぽつりと言った。
「家を空け渡してくれたのね」

でも今でも時折、その柔らかくか細い糸が、指に絡む気がするのだ。
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by nyankoya | 2006-05-09 19:46 | 日々の類似品

巷に雨の降るごとく

ひさびさに美容院へ。
いつも担当してもらっている美容師さんが、今度姉妹店の店長になるそうな。
もうすでに7年のお付き合い。もちろん私もそちらのお店に移動です(笑)
栄転に拍手喝采を贈ったのですが、無類の旅好きな当の本人は「世界遺産巡りができなくなる」と嘆いておりました。

伸びきったパーマをくるっくるにしてもらいました。
でも帰りは雨降りでしょんぼり。

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ひたひたと雨が降る。
肩に髪に。
腕に足に。

しっとりと塗り込められた喧騒が耳に遠く。
裸足の土踏まずから生まれるリズム。
大樹のように全身で水を受け止めて。

ターン。

ステップ。

閉じ込められた観葉植物になりきって、雨上がりの虹を待とう。

雲間から光が差し込んで来たら、傘を持ってあなたを迎えに行きます。

もしもまだ雨が降っていたら、この傘はささずに帰りましょう。

もしも晴れていたなら、青空柄の傘をさして、手をつないで、コロッケを頬張りながら帰りましょうね。
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by nyankoya | 2006-04-23 19:34 | 日々の類似品

箱に猫

予想外のことが起きたり、予想したことが起きなかったり、人生とはなかなかドラマチックなものです。
だからこそ楽しいのだ、と開き直れる度胸と根性が必要ですね。
特に何があったというわけではないのですが、なんとなく。

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シルクハットの神様が出て来て言った。
「この箱の中の猫は生きているか死んでいるか?」

しばらく考えて、「生きている」に決める。
根拠は、ない。

神様はにっこり笑ってふたを開けた。
中の猫は死んでいた。

今度はジーンズをはいた天使が出て来て言った。
「この箱の中の猫は生きているか死んでいるか?」

わからないのでカンで「死んでいる」

天使が無表情に箱を開けると、三毛猫が飛び出した。
抱き留めて喉をくすぐってやると、ごろごろ。

次に出て来たのはトレンチコートの悪魔。

「この箱の中の猫は生きているか死んでいるか?」

私が答える前に、悪魔はにやりと笑って箱を開ける。
中身はからっぽ。

最後はハーフパンツをはいたピエロ。

「この箱の中の猫は生きているか死んでいるか?」

質問が終わるや否や、無数の鳩が破裂するように飛び出した。

紙の残骸と化した箱をぶらさげて、ピエロは彼方へ飛んで行く鳩たちを見送る。
やおら私を振り替えると、左半分笑って、右半分泣いた顔で言った。

つまりふたを開けなきゃ何も分からないってことさ。
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by nyankoya | 2006-04-18 09:38 | 日々の類似品

川の流れに

金曜日は仕事をさぼって映画を観に出かけました。
「かもめ食堂」です。好きな女優さんばかり出ているので行ったのですが、すごーくすごーくよかった。
フィンランドに行きたくなりました。

ゆるやかに美しいけれど、決して時間の流れを止めることはできないのです。

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電車の座席に腰掛けると、向かいの窓硝子に時間が映って見えた。
矢印の形をして、すごいスピードで後ろへ後ろへ。

手を伸ばしてみると、指先からあっさりと硝子の中へずぶりと沈む。
矢印のしっぽをひとつつかむ。
つるつると滑るそれを五本の指でなんとか絡め取って、両手でがっちりつかんでやる。
矢印はいやいやをするように、ぴちぴちともがく。
私は矢印の先に唇をよせて囁いた。

もう少しだけここにいよう。
どうして急ぐ必要があるの。
どうしてここで止まってちゃいけないの。
行く先に何があると言うの。

ばちんと矢印がはねた。
私は打たれた手の甲がうっすらと赤く腫れるのを感じながら、飛び上がったそれを見つめた。

「留ることはできない。生きていたいと思う限りは」

どこにあるかわからない口から。神のような声で。

そしてまた窓硝子の海に飛び込み、どれがどれやらわからなくなって流れていく。

打たれた跡が矢印の形に腫れていた。
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by nyankoya | 2006-04-03 09:25 | 日々の類似品

残響

三月ですね。桃の花が花屋さんに並ぶようになりました。
店頭で桃の枝を選んでいたら、タイルの床に黄緑のものが散るのです。
なんだろうと思ったら、桃の花の残像でした。
桃色と葉の緑は補色関係なんですね。
この世は色に満ちています。

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視線をずらすと幻の緑が丸く散った。
一瞬前まで見つめていた真紅の花。

冬の名残を霧のようにまき散らしながら、風にさらわれてゆく。

全く正反対の
相反する
きつく惹かれ合う
必ず思い出す
苛烈な残響

紅に緑
紫に黄
青にアイボリ
黒に白

鏡合わせの世界でいつも見つめ合っている。
天使のような悪魔か
悪魔のような天使か

混ぜれば灰色、重なれば白。
どちらを選ぶかはお好みで。
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by nyankoya | 2006-03-06 09:32 | 日々の類似品

words

今帰りです。
つつつ疲れた。
長時間ディスプレイを見ていると、色の感覚がおかしくなります。
文字に色が付いて見えたり、画像がやけにくすんで見えたり。
帰る直前に、30分前に打ったメールを読み返したら、
「お願いします」が「尾根が死にます」になっていました…。

明日の朝一番に度肝を抜かれる人がいます。

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帰り道に何やら光るものが見えた。

前方の道路の隅。
近寄って拾いあげたら、「追って連絡します」であった。
薄く堅い金属でできた、茶色の。

ふと辺りを見回すと、そこここに様々な言葉が落ちている。

真っ赤で熱を持った「痛い」
小さいくせにずっしりと重い「もう疲れた」
ピンクでふわふわの羽根が生えた「大好き」
流麗な形でつるつると滑る「ご機嫌うるわしゅう」
透き通った碧い「ごめんなさい」

灰色にもつれあった誰かの言い訳の糸玉に足を取られて、転びそうになる。
おいしい匂いのする湯気が「お帰りなさい」の形に立ち上ぼる。
子供たちの後ろを、「ただいま」がゴム毬のように弾みながらついていく。

真っ直ぐ伸びる遊歩道は、「家路」の形にくねくね。

「睡魔」の長い影を引きずって、
ふかふかの「おやすみ」に、きゅうと沈んだ。

今日も一日お疲れ様。
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by nyankoya | 2006-02-23 00:39 | 日々の類似品

春近く。

日本語って面白いですね。
特に擬音語とか擬態語。
一見意味不明な言葉の羅列なのに、びっくりするくらい鮮やかに状態を表してしまう。

なんでこんなことを突然言い出したかというと、擬音語・擬態語の辞書を買ったのです。
とても画期的でかわいらしい本。
今の私のお気に入りです。

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下草をさくさくと踏んで歩く。
太陽がさんさん。
小川がちょろちょろ。
鳥はぴーひょろ。

するすると空を滑る飛行機雲を眺めて、
さらさらと風になびく髪。
ほとほと歩く三毛猫とすれ違う。
塀の上では黒猫がうらうら。
思わずにっこり。

パン屋さんの紙袋がかさこそ。
一等見晴らしのいい丘の木陰に腰を下ろして、いただきます。
メロンパンをぱくり。
ふわりと横切る綿毛に春の気配。

今日もほっこりしあわせ。
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by nyankoya | 2006-02-14 09:32 | 日々の類似品

Open

週末の雪には参りました。
今日も今日とて路面はつるっつるです。はー怖い。

雪をかぶっても東京拘置所は堂々たるものです。
ついにホリエモンが来ましたね。なかなか悪いことって出来ないものです。

春はまだかな。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

雪の溶ける音がする。
六花がつるりと溶け合って滑り落ちる音が。
ほどける息吹と光を帯び始める風。
雪の女王のまどろみ。
ひび割れた卵から零れる金色。

深くソファに腰掛けて、読みかけの革表紙を開く。
挟んだきり忘れていた押し花の青。

ふいに足音を聞いて振り返ってしまう。
透明な下草を踏む、幻の。

すぐそこまで来ている。でもまだ少し早い。
まだ冬の長い裾の端を掴んで、遠くを見ている。
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by nyankoya | 2006-01-24 09:28 | 日々の類似品

自転車とプラネタリウム

ちょっとご無沙汰でした。

連休は、髪を切りに行ったり友達と会ったり。映画を観たり。
原宿の貴和製作所でパーツを買い込んで、アクセサリ作りに没頭したりしました。

自転車で散歩したりもしましたよ。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

冷たい冬の風が頬にあたる。
日曜の午後、自転車に乗って、いつもより5cm高い目線で、町を駆ける。
雑踏を抜けて、
放置自転車の迷路をくぐって、
おばあちゃんの後ろはそうっとゆっくり。

上空を渡るパラグライダ。
誰かのへたくそなピアノ。
公園のサックス吹きはプロ並。
鳩とおいかけっこして、
枯れ葉舞う路地を抜けて、
ギアを入れてもっと速く!

太陽がてっぺんに届く頃には、水際でお弁当を食べましょう。
温かいお茶を買って、
水鳥にお裾分けしながら、
デザートは甘い蜜柑。
空に流れる時間と水に流れる時間が微妙に違うような気がするのはどうしてだろう。

帰り道が少し遠くてほわほわ光るのはどうしてだろう。

大切なものはみんなあの家に置いて来たから、
プラネタリウムに寄ったら、ゆっくり帰りましょう。

きっとちゃんと帰りましょう。
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by nyankoya | 2006-01-11 09:29 | 日々の類似品


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